観阿弥の子である世阿弥のほうが世間的には有名かもしれません。

能の幽玄的な魅力を創り上げた方です。

この方の言葉で有名な言葉に、

秘すれば花、秘さずば花ならず

風姿花伝に記載された有名な言葉です。

他にもこの記事のタイトルの、

初心忘るべからず

というのが有名なところで、一般的には始めた時の気持ちもを忘れずにいるという意味で使われています。

ただし、もともと世阿弥がこの言葉を使った意味合いは違うようで、新しいことにするにあたっての困難とか大変さ、未熟さという意味合いがあるそうです。

この言葉、実際にはまだ言葉がいくつかつながっていて、

「是非の初心忘るべからず」「時事の初心忘るべからず」「老後の初心忘るべからず」

と世阿弥は言っています。

是非の初心とは良いこと悪いこと含めての境遇、時事とはいくつになっても新しいものに挑戦する気持ちを持つ大切さ、そして老後になったとしても新しいことに挑戦する心構えが大切であるということですね。

住することなきを、まず花と知るべし

これも世阿弥の言葉で花伝の中にある言葉ですが、住するところなき、つまりは一箇所に留まらないことが大切であるということ。いくつになっても新しいことにチャレンジしていく心構えを説いています。

この住するところなきは、沢庵和尚が著書「不動智神妙録」説かれていた「無明住地煩悩」や「応無所住而生其心」に通じてくるのだと思います。沢庵和尚の不動智の考えは徳川幕府兵法指南役の柳生宗矩の兵法家伝書にも記載があります。(柳生宗矩は父の石舟斎健在のころから徳川家康、秀忠、家光と3代にわたって指南役を受け、最終的には1万石の大名にまで出世しています)

また柔道という名称を最初に使った寺田勘右衛門満英も沢庵和尚に師事し不動智(住するところなき)の考えを学んでいるようです。

余談ですが、柔道といえば創始者の嘉納治五郎が有名ですが、東京オリンピックを一番最初に誘致に成功した人で、太平洋戦争がなければ1940年に東京オリンピックが開催される予定だったんです。

 順道制勝 行不害人

嘉納治五郎 順道制勝の記事

 

ちょっと話が飛んでしまいましたが、世阿弥は禅のお寺(確か曹洞宗)に参禅していますので、禅の影響も少なからず受けているようです。世阿弥と禅の研究所もいろいろと出版されているようですので、いずれ読んでみたいと思います。

世阿弥の父:観阿弥は、今川氏に呼ばれ静岡の浅間神社で能を披露した後、静岡の地で亡くなっています。時に1384年のことです。

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